葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景」の「青山円座松」について説明する。
この浮世絵の円座松とは、現在の渋谷区神宮前にある青山龍岩寺の庭にあった松の老木で笠松、円座松のことである。
枝のわたり三間(約5.6m)あまりあり」ともいわれ、山のようにも見えるこの松は江戸の名所であった。
この浮世絵は、笠を置いたような松のこんもりとした姿と突き出た三角形の富士山との対比で、絶妙の構図で描いている。
富士山の姿は霞雲をはさみ、実際よりも大きめ描かれている。
参詣者は寺の広い庭園を散策してこの松を鑑賞していた。
画面右下には三人の男が毛氈をしき、弁当をひろげて盃を交わしており酒に興じる一行がいる。
通りすがった通行人の父親が子どもを手ぬぐいで引っ張って坂を上る姿などもこの景色に見入っている。
よく見ると画面左下には、松の添え木にまじり、落葉を掃除している者の足と箒だけが描かれている。
この浮世絵は1830年から1832年頃の作品である。北斎の年齢が72歳頃になる。

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